研究概要 |
(1)フィールド観測 広島湾奥部に設けた10-13箇所の定点において2005年7-9月に月一回の割合で,水温・塩分・溶存酸素濃度の測定と,プランクトンネット(口径45cm,目合い0.3mm)の鉛直曳を行った. 直前に大雨が続いた8月の調査日に比べて,7,9月には湾奥部(北-東部)底層の貧酸素化がより進行していた.7,8,9月の定点あたりミズクラゲ平均重量は,4681.7,1781.3,789.4g/m^2であった.採集量が多い月には,湾東部に高密度域が認められた.採集された魚卵稚仔の90%以上をカタクチイワシ卵が占め,その水平分布の中心は,7,8,9月ともに調査水域の中心部(江田島北方水域)に認められた. カタクチイワシ卵に比べてミズクラゲ高密度域が溶存酸素濃度のより低い湾東部に偏っていたことは,室内実験の結果を支持している.ミズクラゲの高密度域が湾東部に形成される要因としては,1)貧酸素化した場合には外敵が少ない,2)ポリプの付着に適したコンクリート護岸などの構造物が多い,3)浮遊生活期個体の収束域となる物理条件が存在する、等が想定される. (2)室内実験 ミズクラゲの窒素・炭素安定同位体比の濃縮率を調べるため、飼育実験を行った。 その結果、成体ではΔδ^<13>C=2.0‰,Δδ15N=0.8‰、一方エフィラ幼生〜未成体ではΔδ^<13>C=1.4‰,Δδ^<15>N=1.1‰であった。 この値を,来年度以降フィールドでサンプリングされるクラゲの同位体比の解釈に用いることとする。
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