研究課題
(1)野生株とタイプIII変異株を用いた病原性試験作製したタイプIII変異株と野生株をヒラメの腹腔内に接種し、野生株とタイプIII変異株投与群の累積死亡率に差が生じるかを経時的に調べところ、野生株投与群において顕著に高い累積死亡率が観察された。(2)エフェクター候補遺伝子のノックアウト株を用いた食菌抵抗性試験 E.rardaのタイプIII分泌装置遺伝子クラスターの塩基配列から推定されるエフェクターの候補遺伝子(9遺伝子)をリストアップし、それらの遺伝子のノックアウト株を作製した。作製したノックアウト株を用いて食菌作用抵抗性試験を行ったところ、5つの遺伝子ノックアウト株で顕著な食菌作用抵抗性の低下がみられた。また、ゼブラフィッシュを用いた病原性試験を行ったところ、食菌作用抵抗性の結果とほぼ同様の結果が得られ、同様の5つの遺伝子ノックアウト株で顕著な病原性の低下がみられた。(3)yeast two-hybrid法によるエフェクター候補と相互作用する宿主因子の探索 食菌作用抵抗性が減弱された5つのエフェクター候補遺伝子と相互作用する宿主因子をyeasttwo-hybrid法を利用して探索した結果、2つのエフェクター候補遺伝子に関しては相互作用する宿主因子が得られた。(4)陽性クローンの相互作用の確認(pull down assay)Yeast two-hybrid screeningで得られた陽性クローンのいくつかについては、実際に蛋白質同士で結合することを試験管内でのpull down assayにより確認した。 以上の研究結果から、全くこれまで未知であったE.tardaのタイプIII分泌装置およびその新規エフェクターを介した病原性発現機構、特に食菌抵抗性機構について明らかに出来たと考えられる。今後はE.tardaのタイプIII分泌装置やそのエフェクターを標的にしたワクチン開発や創薬研究などの可能性につながっていくことが期待される。
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