研究課題
基盤研究(C)
(1)野生株とタイプIII変異株を用いた食菌作用抵抗性試験マウス由来マクロファージに対する食菌作用抵抗性に野生株とタイプIII変異株の間で差があるかを検討した。野生株ではマクロファージ内に侵入した細胞内菌数は、感染後、経時的に増加したが、タイプIII変異株では、経時的に細胞内菌数は減少し、感染後22時間目で細胞内菌数はほとんど消失した。これらの結果から、III型分泌装置はE.tardaのマクロファージ内での細胞増殖性に必須であり、III型分泌装置からマクロファージ内に分泌されるエフェクター蛋白質の存在が強く示唆された。(2)マイクロアレイによるマウスマクロファージ遺伝子応答の解析野生株とタイプIII変異株を用いた食菌作用抵抗性試験で差が認められたことから、それぞれの菌株を感染させたマクロファージからRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行った。その結果、野生株においてNF-κB制御下にあるサイトカイン遺伝子群や抗アポトーシス活性を有する遺伝子群の顕著な上昇が見られた。(3)III型分泌機構を介した上皮細胞内への侵入・増殖メカニズムの解析野生株およびyscV変異株をヒト喉頭癌由来上皮細胞に感染させ、経時的に細胞内菌数の測定を行った。その結果、野生株では、HEp-2細胞内生菌数は感染後経時的に増加したが、yscV変異株では細胞内生菌数は徐々に減少し、感染後22時間目ではほとんど消失した。mRNAの発現解析を行ったところ、既報のマクロファージでの知見と異なり、転写活性化因子であるNF-κBの野生株特異的な活性化は起こらず、従ってNF-κB制御下にあるサイトカインや抗アポトーシス活性を有する遺伝子群の上昇は見られなかった。以上の結果から、E.tardaはHEp-2細胞内でのNF-κB活性化を抑制することで、効率よくIII型分泌装置依存的に上皮細胞内で増殖することが可能になると考えられる。E.tardaのIII型分泌機構は本菌の上皮細胞内への侵入・増殖性やマクロファージ内での細胞内増殖性に必須であり、さらにこの細胞内増殖性は本菌の病原性に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。これらの知見をもとに、将来、III型分泌機構や未知のエフェクター候補の機能を不活化するような薬剤または同様の効果を有するワクチン開発につながれば、本病による産業被害を軽減することが期待される。
すべて 2008 2007 2006 2005
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (23件)
FEMS Microbiol.Lett. 283
ページ: 9-14
FEMS Microbiol. Lett. 283
Dis.Aquat.Organ. 76
ページ: 113-121
Dis. Aquat. Organ. 76
Microb.Pathog. 41
ページ: 226-240
Fish Pathology 41
ページ: 165-170
ページ: 29-34
Microb. Pathog. 41