ベータノダウイルスの増殖に適した温度条件は、宿主魚の生息環境の温度を反映していると考えられる。本研究では、この温度感受性メカニズムを解明すべく、まずそれがRNA1(RNA複製酵素をコード)、RNA2(外被タンパク質をコード)のどちらの分節ゲノムに支配されているのかをstriped jack nervous necrosis virus(SJNNV)およびsevenband grouper nervous necrosis vinls(RGNNV)間のリアソータントウイルスを用いて検討した。 方法として、E-11細胞にSJNNV(SJI/SJ2)、RGNNV(RG1/RG2)あるいはリアソータントウイルス(SJ1/RG2おびRG1/SJ2)をそれぞれ接種し、15、20、25および30℃における各ウイルスの増殖量を経時的に調べた。また、ウイルス増殖量とRNA複製量あるいは粒子化効率との関係を調べるため、ウイルス感染細胞からtotal RNA画分およびvirion RNA画分を調製し、ノーザンハイブリダイゼーションによるウイルスRNA検出を行った。 その結果、15、20および25℃では、4種被験ウイルスの増殖量の間には有意な弟は見られなかったが、30℃ではRG1/RG2のみが25℃の場合と同様の旺盛な増殖を示した。それ以外のウイルスは30℃では増殖が著しく抑制された。この結果から温度感受性にはRNA1、RNA2の両方が関与することが示唆された。そこで、30℃におけるウイルス増殖抑制の原因を調べるため、各ウイルスの25および30℃におけるウイルスRNA複製量および粒子化効率をノーザンハイブリダイゼーションにより確認した。その結果、RG1/RG2は両温度で同程度のRNA複製および粒子化を示したが、SJ1/SJ2、SJ1/RG2およびRG1/SJ2では粒子化以前のRNA複製が30℃で抑制されていた。
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