研究概要 |
哺乳類の造血幹細胞は、細胞膜中のABCG2トランスポーターの働きによりHoechst色素に難染性を示す細胞集団(SP細胞)に含まれる。我々は既に魚類の造血幹細胞が腎臓SP細胞に含まれることを報告しているが、魚類におけるHoechst排出機構は未解明である。そこで本研究では、魚類腎臓SP細胞においても哺乳類と同様の機構が働いているかをゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用いて調べた。 【方法】ゼブラフィッシュの腎臓造血細胞をHoechst33342で染色し、フローサイトメトリー(FCM)によりSP細胞のソーティングを行った。その後、それらの細胞を用いてRT-PCRによりゼブラフィッシュABCG2(zABCG2)の遺伝子発現を調べた。さらに、COS-7細胞へzABCG2をトランスフェクションし、zABCG2のHoechst排出能を調べた。 【結果】ゼブラフィッシュには4種類のABCG2(zABCG2a,b,c,およびd)が存在し、腎臓SP細胞においてはzABCG2aおよびcが発現していた。このうち、zABCG2aはヒトABCG2とアミノ酸同一性が最も高く、組織における発現パターンも似ていることから、ゼブラフィッシュではzABCG2aがヒトABCG2と類似の機能を有していることが示唆された。そこで、zABCG2aをCOS-7細胞に発現させ、FCM解析を行ったところ、Hoechstに難染性を示す細胞集団が認められ、それらの細胞はzABCG2aのmRNAを発現していた。 以上より、魚類腎臓SP細胞においてもABCG2がHoechst排出に関与しており、造血幹細胞のHoechst排出機構は魚類から哺乳類まで保存されていることが示された。
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