1.魚の体表・鰭の損傷は、魚自身の健康維持、さらには品質の観点から避けなければならない。代表研究者はこの点に着目し、自発摂餌を用いてニジマスを飼育し、種々条件(光照度、起動スイッチの深度位置、給餌方式、給餌時刻など)を変えた際の損傷に関する実験を行い、下記の成果を得た。 2.背鰭・腹鰭の損傷(裂傷/侵食)の発生と起動スイッチの水深差との相関を調べた結果、両者に有意差は認められなかったが、飼育期間の経過に伴い、背鰭の裂傷は起動スイッチが浅い時に有意に減少し、腹鰭の侵食は起動スイッチが浅い時も深い時も有意に増加することを明らかにした。 3.給餌スケジュール(回数・時刻)が異なる場合の損傷に関する実験では、背鰭・腹鰭の損傷と給餌スケジュールの間に有意差は認められなかった。しかし、一日一回給餌群では、飼育期間の経過とともに腹鰭の侵食回復が有意に遅くなる一方、背鰭の侵食は有意に増加するという結果が得られた。 4.手撒き給餌群と自発摂餌群の二条件で背鰭・腹鰭の損傷を調べた結果、手撒き給餌群では、腹鰭の損傷が自発摂餌群に比して有意に高かった。また、自発摂餌群では腹鰭の損傷は減少したが、手撒き給餌群では減少しなかった。背鰭の損傷は自発摂餌群も手撒き給餌群も減少するという結果が得られた。 5.上記実験において、背鰭や腹鰭に損傷がある個体は、損傷がない個体に比して体表が黒化していた。体表黒化は損傷によるストレスに起因していると考えられた。そこで、体表の画像解析を行い、非接触・非侵襲的にストレス測定法の開発を試みた結果、局所的明度相対値(黒班部/周辺部)を指標として用いれば、測定が可能であることを明らかにした。
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