マイワシ・カタクチイワシ・マサバなど小型浮魚類の資源変動は、人為的な漁獲の影響よりも地球的な気候変動に大きく左右されると考えられているが、その一方で仔稚魚から未成魚までの減耗に関与する最大の要因は他の動物による被食であると報告されており、気候変動によってもたらされる餌料環境によって影響を受ける仔稚魚の成育状況と、最大の減耗要因である被食減耗との間には、密接な関連があると想像される。 本研究では種苗生産された海産魚類仔稚魚を用いて、実験的に体長・成長速度・成長履歴と被食回避能力の差違との因果関係を解明し、実験により得られた結果が実際に捕食者との遭遇においても当てはまるかどうかについて、以下の3点を中心に研究を進めている。 1)実験水槽内で群の相対位置や流速に対する遊泳位置を特定して採集する定量採集具を作成し、同一群内で生じる視覚刺激応答、運動能力、逃避能力の差違に着目した選別採集を行う。 2)孵化日の異なる集団を異なる飼育条件で飼育することにより作られる同一体長で成長速度の異なる群と、同一集団内で生じる成長速度と体長の個体間のばらつきを利用して、群が実際の捕食者と遭遇した場合の生残の差違を個体レベルで検証する。 3)被食逃避能力の異なる個体の体長・成長速度・栄養状態を、耳石日周輪と核酸比等の生理学的指標と比較して解析する。 平成18年度は、小型回流水槽に設置できる、群の相対位置や流速に対する遊泳位置を特定して採集する採集具を作成し、飼育されたカタクチイワシ稚魚と沿岸小型定置網で採捕・畜養されたカタクチイワシについて、群れの前部・中央部・後部のそれぞれに位置する個体を同時に選別して採捕する手法を確立した。選別採集された個体は-80℃の冷凍庫で保存し、耳石を摘出して成長速度の比較を行うと共に核酸比の測定を行っている段階にある。
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