本研究は海産由来の重要な食品成分でありヒト脳内主要高度不飽和脂肪酸でもあるドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに各種プロスタノイド関連の高度不飽和脂肪酸であるアラキドン酸(AA)について、それら代謝体・誘導体の脳虚血による神経細胞・遅延性神経細胞死保護作用、脳虚血保護作用の検索を目的に、ラット脳海馬CA1領域の神経細胞を用いて、NMDAレセプター応答、APMA/KAレセプター応答を指標にスクリーニング試験を実施した。 その結果、DHA誘導体の内、L-グルタミン酸誘導体がAPMA/KAの応答を減弱することが示された。しかしながら、その作用強度は、DHAと同程度であった。また、NMDA応答に対してはL-グルタミン酸誘導体は減弱作用を示し、DHAの作用とは逆であった。一方、DHAやAAの代謝体であるモノヒドロキシ体は、総じて1μMの低濃度でAPMA/KA応答並ぴにNMDA応答をいずれも減弱させたことから、4-ヒドロキシDHAの周辺化合物11種について合成・評価したが、4-ヒドロキシDHAより強力な化合物は認められなかった。 以上より、DHAやAAより強力な脳虚血による神経細胞、遅延性神経細胞死保護作用、脳虚血保護作用を有する化合物は認められなかった。ただし、DHAやAAのモノヒドロキシ体については強力な薬理作用を有する可能性が示唆されたことから、今後、4位以外のモノヒドロキシ体、ジヒドロキシ体、或いはエポキシ体について、詳細に検討していく必要があると考えられた。
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