毒化ホタテガイに認められるゴニオトキシン群(GTX)麻ひ性貝毒の分解物と考えられる成分を、活性炭、Toyopearl super QおよびSephadex 10各カラムクロマトグラフィーで順次精製し、褐色成分を得た。同成分を蟻酸アンモニウム緩衝液とODSカラムを用いるLC/MS/MS(API-2000)のpositive-Q1 scan、positive-production scan modeで分析したところ、m/z164に[M+H]^+と思われるピークが認められた。同成分は1-H NMR上で8.65ならびに8.85ppm付近にいずれもmultipletのプロトンのピークを示した。本成分の構造は現在解析中である。本成分は11位に硫酸エステルを持つGTX群がグルタチオンと反応して生じたGS-STXが貝のγ-グルタミルトランスペプチダーゼで消化されることにより生じる不安定な蛍光成分の最終産物と考えられる。同様の分解は、GTX群にシステインをin vitroで作用させた場合にも認められるが、この反応で生じた蛍光成分は不安定で単離して構造を確認するには至っていない。一方、システインとは反応しないサキシトキシン(STX)などの11位が還元された毒成分の中性水溶液に種々の植物加工品もしくはその抽出液を加えて加温したところ、ほうじ茶、紅茶などの茶製品が高いSTXの消去作用を示すことが明かとなった。茶類の代表的なポリフェノールであるカテキンおよびタンニン酸を0.1%含む中性リン酸緩衝液中では、沸騰浴中5分の加温もしくは37℃で30分の加温により、約20μMのSTXが消失することが明かとなった。本作用は酸性側では全く認められず、pH6.5以上の溶液中でのみ認められた。
|