研究課題
麻ひ性貝毒で毒化したホタテガイの腎臓から、活性炭、Sephadex G-10、Wakosil 25C18各カラムクロマトグラフィーを用いて蛍光成分を単離した。本蛍光成分は貝の体内で11位に硫酸エステルを持つゴニオトキシン群麻ひ性貝毒がグルタチオンと反応して生じた結合体が、γグルタミルトランスペプチダーゼで消化を受けて生じる不安定な成分が酸化されて生じるものと考えられる。本成分の詳細な構造は現在解析中であるが、分子量179で272nmと341nmに吸収を示すこと、赤外線吸収スペクトルでカルボニルの存在が確認できること、ならびに1H-NMRで8ppm付近にシングレットが確認されることなどから、環外にアルデヒド等の共役系を持つアミノプリン誘導体であると推定された。ゴニオトキシン群がシステインと反応した場合にも同様に、無毒の蛍光成分が生じることを確認した。サキシトキシン、ネオサキシトキシンなど11位還元型の麻ひ性貝毒成分はチオールとは反応せず、これらを生物チオールで無害化することはできない。これら成分を分解する生体成分をスクリーニングしたところ、カテキン、タンニン酸、エラグ酸、没食子酸および没食子酸プロピルなど種々のポリフェノールに、これらサキシトキシン群の消去作用が認められた。ポリフェノールは11位還元型の麻ひ性貝毒成分にのみ消去作用を示し、20MU/MLのサキシトキシン中性溶液に0.1重量%のタンニン酸を混合した場合には、沸騰浴中で3分以内、37℃で30分以内にマウス毒性が消失することを確認した。この効果は中性付近で最大となること、アスコルビン酸やグルタチオンの添加で抑制されること、12位が還元されたサキシトキシン12olはポリフェノール溶液中で全く変化を受けないことから、ポリフェノール溶液中で毒が酸化分解を受け、無害化されていることが強く示唆された。
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Seafood and Freshwater Toxins, Pharmacology, Physiology, and Detection, LM, Botana ed.CRC Press, Boca Raton, London, New York 2
ページ: 165-175