研究概要 |
1.中欧の旧社会主義計画経済諸国は,1990年代前半のほぼ同じ時期に市場経済システムを導入したのであるが,その後の展開は各国各様であり,青果物フードシステムにおいても多様性が認められる。 2.その多様性を規定する要因として注目されるのは,「農業生産の発展段階(生産の集中)」,「卸売業者の構造(規模・運営)」,「卸売市場の構造(業者数)」,「小売企業の構造(スーパーのシェア)」,「消費者行動(まとめ買いの程度)」以上5点であった。 3.各国の青果物フードシステムの特徴を述べるならば,チェコでは,市場経済導入後に,集団農場に集積されていた土地をもとの地主に返却されたが,耕作意思のない土地のほとんどは大規模借地農場に集積され,再び農業生産の集中が進展している。このため大規模生産者から卸を介してスーパーに青果物を供給するルートや生産者から直接スーパーに青果物を納入する事例もある。これを消費の側から支えるのがスーパーチェーンの発達であり,自家用車が一定程度普及している消費者のまとめ買い傾向である。 4.他方,ポーランドでは計画経済当時から小規模生産者による農業生産が主流であり,またルーマニアにおいては,農地変換後に生産手段の再配分を受けられなかった小規模生産者による農業生産が一般的である。このような状態の中で,スーパーチェーンに対応するためには,生産者グループの形成や卸売業者の発達によって生産物を集積することが必須であるが,それらは未発達な状態にあり,スーパーチェーンの展開も低いレベルにとどまっている。 5.これらの視点は,移行経済諸国のみならず先進経済諸国,また開発途上国においても援用可能な視点であると言える。今後はこれら機能に注目し調査研究を続ける。
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