今年度は、以下のように研究を推進し研究成果を得た。 1.中国のトウモロコシ主要産地である吉林省にて、吉林農業大学の研究協力者との連携のもと、地方政府、穀物流通企業、農家から、トウモロコシの生産と流通に関する聞き取り調査を実施し、以下の点が明らかになった。 (1)穀物に対する需要が増大により穀物価格は上昇し、政府の農業保護政策(直接支払い制度、農業税撤廃)とも相まって、産地として活況を呈している。また、穀物生産に留まらず、畜産や加工部門(飼料、澱粉、エタノール等)が、地方経済にとって重要な位置を占めつつあり、地方政府もその振興策に力を入れている。 (2)流通機構の自由化政策により、かつての国有流通企業は民営化・合理化を推進し、また加工企業の直接買付が可能になり、民間穀物取扱業者誕生する中で、穀物流通は自由化・複線化している。同一エリア内に複数の穀物買取企業が併存することにより、農家からの買取競争が発生していることを確認した。 (3)生産農家は、都市への出稼ぎが急増しているが、穀物の高価格と政府の農業保護政策への転換は、農家の生産意欲を高めている。農家は、買い取り価格に敏感に反応する小商品生産者となっており、少しでも高い買取業者へ販売するようになっている。買取企業との契約栽培は、以前経験したことがあるが、農家と企業の双方にとってメリットが見えず、一般の穀物についてはむしろ減少する傾向にある。 2.日本、中国、韓国やEU(フランス)の農業政策、及び、穀物生産・流通制度に関する資料収集を行った。また、「北東アジアにおける新自由主義と農業構造問題」をテーマにした第三回北東アジア農業・農村発展国際シンポジウムを富山で開催し、中国や韓国の研究協力者等が参加し意見交換を行った。研究代表者は、日中韓の農業政策の比較に関する報告(「新自由主義と米制度改革-日中韓の比較考察-」等)を行った。
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