品目横断的経営安定政策の展開状況について、広島県庁、福井県庁、岐阜県庁の3県での担当部局へのヒアリング調査を実施し、あわせて、品目横断的経営安定政策の実施に伴い集落営農組組織の法人化に顕著な特徴のある、広島県庄原市、福井県あわら市、岐阜県岐阜市の集落営農組織の代表者等へのヒアリング調査・関連資料の収集・分析を行った。 また、関連文献の批判的検討を通して農業共同体論にまで遡り、集落営農組織の基本的展開論理に関しての考察を行った。 その研究成果は学会報告として、荒井聡「現段階における「農業共同体」の性格と機能-大塚久雄『共同体の基礎理論』を手がかりに-」(2006年度政治経済学・経済史学会春季大会報告、2006年6月24日、東京大学)、荒井聡「品目横断的経営安定政策と集落型農業生産法人」(2006年度農業問題研究学会秋季大会個別報告、2006年11月23日、東京農工大学)で発表している。そのうち2006年度政治経済学・経済史学会春季大会報告内容は著書(分担執筆)として公刊されている。 18年度の研究を通じ、麦・大豆作を行う集落営農組織は、条件不利補正対策として経営安定対策加入のメリットが大きく、それが法人化を促進する契機となっていること、また稲作のみの場合、ナラシ対策としてのメリット認識は薄く、法人化の契機になりにくいことなどが、集落営農組織の経営意向に関する統計分析、実証的研究により明らかになった。 稲作のみを栽培する集落営農の場合、農業集落の生活共同体としての機能に注目することが重要で、単に経営安定対策によるナラシ対策のメリット享受だけではなく、地域生活・伝統文化・環境の保持という観点から、非農家・地域住民と連携した集落・共同体の維持・再構成を図るという観点から取り組むことが必要であることを指摘した。
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