愛媛県、福岡県、広島県、高知県の農協および連合会を対象として、地域農業の実態把握、県内農協および連合会の組織・事業・経営構造の変化を中心に幅広い聞き取り調査、資料収集を行った。また、全国農業協同組合連合会、全国農業協同組合中央会を対象とした聞き取り調査と資料収集により、系統農協組織の再編状況、経済事業改革の進展状況などの把握に努めてきた。 現在、系統農協組織は、第23回全国農協大会で決議した営農経済事業改革に取り組んでおり、購買事業と営農指導事業に関しては、県レベルの方針が決定されて単協で実践されつつある。しかし、販売事業に関しては2006年度に県レベルでの指針が示された段階であり、これから県連および農協の取り組みが本格化すると考えられる。組合員の多様な要望を実現する形での販売事業のあり方や販売事業のみによる採算性の確保も求められており、本研究の問題背景として考えられた専門農協的事業展開が、全国的にまさに追求されようとしていると理解した。 とはいえ、農協の実態調査からは、減少する販売取扱高に対して総合的に有効な施策を見出せない中、流通業者のニーズに対応した様々な販売対応を模索せざるを得ない状況にあり、事業の採算性を重視しすぎると、そうした多様な対応が行えないという矛盾の存在が明らかになった。他方、生産者との協議の中で新たな販売展開を模索する取り組みや単協では維持できなくなりつつある指導員を専門事業連合会が育成・派遣する取り組みなど、専門農協的事業や専門事業連合会の存立意義も見出すことができた。 次年度は、事例を研究課題の視点に立ち戻り再整理し、今日における農協共販のあり方を見出すことが課題である。また、調査では、流通事情の変化が農協系統の販売事業に予想以上の影響を与えていると判断されたので、その点の解明も次年度の研究課題であろう。
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