調査対象を愛媛県と広島県の農協に絞って、その農協における組織・事業・経営構造の変化に関しての聞き取り調査および資料収集を実施しつつ調査研究を進めてきた。また、全国農業協同組合連合会、全国農業協同組合中央会を対象とした聞き取り調査と資料収集を通して、系統農協組織再編の現状と営農経済事業改革の進展状況の把握にも努めてきた。 愛媛県における青果専門農協の組織再編は、農協の経営収支の悪化と柑橘販売高の減少を背景とし、単協段階では総合農協と合併する形で進み、それと連動して連合会段階の専門事業連合会である青果連が経済連と合併し、現在では全農とも統合している。しかし、青果専門農協の機能は、生産者との結びつきが強い共選場運営の部分で継続しており、自主的事業運営と独自の採算性という理念に基づいて事業展開を行っていた。とはいえ、従来通りの運営では、生産者負担の面で限界があり、経営的には総合農協の経営体力を、事業的には農協職員の専門性にも依存した構造が現れているとみられた。また、広島県における農協は、地域農業の基盤の脆弱化と農協経営的要因により、営農経済事業を縮小する傾向がみられた。さらに、それをサポートする青果専門事業連合会も経営的に悪化する中で、営農指導と販売対応で従来通りの十分な対応が難しくなりつつあった。専門農協的な組織・事業運営は、高度な販売展開と自主的な運営面では重要であり、高い存立意義は確認できたが、農協経営的視点から見ると、その存立のあり方は従来の体制からの変革が必要であると考えられる。 こうした成果は、日本協同組合学会(2007年10月)や愛媛県農業農協問題研究会(2007年11月)で報告し、関係者から幅広い意見を伺えた。また、一部は論文としてまとめ、公表もした。
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