本研究は、系統農協の組織・事業再編の中で、総合農協との合併を実施した、あるいは独自の事業展開を選択した専門農協・事業連を対象にし、その組織・事業・経営構造の変遷過程を体系的に整理し、独自の事業展開を継続もしくは合併後も従来の組織・事業性格を一定程度維持した運営展開を行うことの存立意義を明らかにすることを目的に、従来は専門農協・事業連を中心とした事業展開がみられた西日本の青果物産地に立地する農協・連合会に焦点をあて、調査研究を行ってきた。 愛媛県における青果専門農協の組織再編は、農協の経営収支の悪化と柑橘販売高の減少を背景とし、単協段階では総合農協と合併する形で進み、それと連動して連合会段階の専門事業連合会である青果連が経済連と合併し、現在では全農とも統合している。しかし、青果専門農協の機能は、生産者との結びつきが強い共選場運営の部分で継続しており、自主的事業運営と独自の採算性という理念に基づいて事業展開を行っていた。とはいえ、従来通りの運営では、生産者負担の面で限界があり、経営的には総合農協の経営体力を、事業的には農協職員の専門性にも依存した構造が現れているとみられた。また、広島県における農協は、地域農業の基盤の脆弱化と農協経営的要因により、営農経済事業を縮小する傾向がみられた。さらに、それをサポートする青果専門事業連合会も経営的に悪化する中で、営農指導と販売対応で従来通りの十分な対応が難しくなりつつあった。 専門農協的な組織・事業運営は、高度な販売展開と自主的な運営面では重要であり、高い存立意義は確認できた。しかし、農協経営的視点から見ると、その存立のあり方は従来の体制からの変革が必要であると考えられた。このように、農協の経済事業面における組織・事業・経営の3要素を総合的に把握することの重要性も明らかとなった。
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