2006年度の研究実績は、大きく以下の4点にまとめられる。 第1に、長野県浦里村(現上田市)の1950年代半ばまでの行政文書等を整理、借り出した上で全て複写した。これらの資料の一部を利用し、同村における農村負債整理事業と村長宮下周をはじめ村役場の役割を明らかにした(「1930年代農村負債整理事業の実施過程」)。 第2に、「優良更生村浦里村宮下周言行録(1)」を編集し、1930年代の村長の代表的事例といえる浦里村長宮下周の村長就任前の思想と行動を示す資料集を作成し、その数多くの手記を詳細な解説を付して紹介した。なお、この資料集の編集・紹介は後2回にわたって続行する予定であり、(2)では村長として発表した手記や講演記録、(3)では県議としての宮下に焦点を当て県会での質問記録や活動を示す資料を中心に編集する予定である。 第3に、何人かの町村長を事例として取り上げ、明治期の町村制施行から戦時期までの農村自治の歴史を町村長の活動と役割を通して明らかにした(共著『むらの社会を研究する』)。 第4に、その他、資料の探索収集としては、明治期の村長として埼玉県汐止村(現八潮市)行政文書および同村長田中四一郎の調査・資料収集を行なった。また愛媛県余土村長森垣太郎の関連資料・文献の収集を行なうとともに、同村の行政文書を調査した。さらに京都府雲畑村(現福知山市)の村長井上延茂の関係資料を整理し目録を作成した(『井上延茂関係資料目録』)。戦後の町村長に関しては、京都府園部町(現京南丹市)長野中広務および長野県下諏訪町長黒田新一郎関係の資料調査等を継続実施中である。
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