本研究ではフィルダムにおける水理破砕の発生を推定するうえで、その原因となる亀裂の発生および発達条件について検討する。実際の基礎は必ずしも水平ではなく、ある程度の凹凸(谷部や山部)が存在が考えられる。その場合、谷部に盛土をすることになるが、盛土の弾性係数が基礎の弾性係数より小さければ、谷底部は盛土の自重により引張力を受けることになる。したがって、谷部に盛土する場合は水平部分に盛土する場合よりも伸びによる縦亀裂が生じやすくなると考えられる。 伸びによる亀裂の発生を検討するうえで引張試験は重要であるが、金属や岩石に比べ強度の低い粘性土においては金属や岩石と同様の直接引張試験を行うことはできない。また、厚肉円筒形供試体を用いた間接引張試験は内圧および外圧は空気圧か水圧により制御されるが、あらかじめ決めた増分ごとの測定になるため、圧縮試験のように連続した圧力での測定は不可能である。 そこで、本研究では圧縮試験に用いる円柱型供試体をI字形状(直径7cm、高さ13cmの円柱供試体の中央部9cmの区間の直径を5cmに成形)に成形し、今回試作した引張試験用ペデスタルを用いて直接引張試験を行った。この結果を厚肉円筒供試体についての間接引張試験から求めた引張強度と比較するとともに、有限要素法により供試体内部に生じる応力を算出し、直接引張試験に有効な供試体形状について検討した。 試験と解析の結果、I字形状では供試体とペデスタルの接触で破壊することが多く、引張強度を低く算定する危険性があることが分かった。このことを考慮してI字形状からさらに中央部のみを細くした供試体(中央部5cmの区間の直径を3.5〜4cm)を用いて行った試験結果は厚肉円筒供試体による結果ともよく一致し良い結果が得られた。
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