フィルダムにおける水理破砕の発生を推定するうえで、その原因となる亀裂の発生および発達条件について検討する。実際の基礎は必ずしも水平ではなくある程度の凹凸(谷部や山部)が存在が考えられる。その場合、谷部に盛土をすることになるが、盛土の弾性係数が基礎の弾性係数より小さければ、谷底部は盛土の自重により引張力を受けることになる。したがって、谷部に盛土する場合は水平部分に盛土する場合よりも伸びによる縦亀裂が生じやすくなると考えられる。このことを室内実験により確認するとともに、有限要素法によるフィルダムの築堤解析を行った。 実験では、弾性係数の異なった土が層を成し凸凹の角度をもたせた場合における、伸びによる縦亀裂の発生状況を観察するとともに、縦亀裂が発生する圧縮応力・ひずみ状況について検討する。その結果、含水比(弾性係数)の異なる二層供試体による圧縮試験では谷部の角度が大きくなるにしたがい、伸び亀裂の生じる圧縮応力は小さくなることが分かった。また、二層の含水比(弾性係数)が同じであれば谷部の角度が大きくても伸び亀裂の発生は見られなかった。したがって、谷部へ築堤する際は谷部と築堤材の弾性係数に大きな差が無いように管理することが水理破砕の原因となる伸び亀裂の発生を防ぐために有効と考えられる。有限要素法による解析では、基礎が平坦な場合においては、二次元解析の結果を用いても支障がないと考えられる。しかし、基礎に谷部が存在する場合は、二次元と三次元の値が異なる部分が多いことから、三次元解析を用いることによって、より正確に水理破砕の発生する危険性を推定することができると考えられる。よって、今後はモデルを実際のダムに近づけて解析を行うことで、水理破砕が発生する危険性をより正確に推定することが望ましいと考えられる。
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