研究概要 |
本研究は,都市化や生活形態の変化などといった,いわゆる人間活動が,最終的に生態系や地域の水環境に対してどのような影響を持つのかといった,地域全体を有機的に表現するシステムの構築を目指している.本年度は,対象地域である大江排水路流域の土地利用,産業構造,人口流動などといった統計データおよび単位流出量や汚濁負荷原単位などの水環境に関する基礎データを文献において調査するとともに,大江排水路の水環境を実地調査し,それらの調査結果をもとに簡易なシステムダイナミクスモデルを作成した.現状としてはコンパートメントや情報が不足しており,実用的なものとはなっていないが,都市化が進んだり,農業の形態が変わったりするような,いくつかのシナリオを作成し,モデルに適用した.システムダイナミクスの特徴である非線形に導き出される推論により,都市化が進めば水環境は改善されるなどといった興味深い計算結果も得られた.現モデルは集中型のモデルとなっており,水路内のチェックポイントでの水質や水量を検討するものとなっている.しかし,本研究で求めるべき水環境は面あるいは少なくとも線状の結果でなくてはならず,そのためにはGISを含めた地理情報を組み入れて,分布型モデルへと発展させることが必要となる.また,不足しているコンパートメントである,生物相を組み入れるためのエネルギー型の生態系モデル,地理情報を組み入れた物理的水文流出モデル,人口の移動や経済活動を含む社会モデルなどの構築も次年度の課題となる.
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