研究概要 |
本研究は,ため池堤体の非破壊探査技術による耐震性評価技術の開発を目指している。平成18年度は表面波探査と常時微動測定によりかんがい用ため池の増幅特性を検討するため、香川県内約40箇所のため池を対象として、表面波探査,常時微動測定により堤体および地盤のS波速度分布及び卓越周期を求めた。 表面波探査は,地盤の地表付近を伝わる表面波(レイリー波)を多チャンネルで測定・解析することにより,深さ20m程度までの地盤のS波速度を把握した.また、微動測定では、堰堤の天端と下流側地盤上で微動の同時測定を行い、成分ごとのフーリエスペクトルを求めた.更に水平成分と鉛直成分のスペクトル比(H/Vスペクトル比))を算出することにより堰堤の振動特性(卓越周期)を把握し,天端と地盤における水平成分のスペクトル比を取ることにより水平成分の振動の増幅特性を把握した。 本研究では,ため池の型式を,皿池,台地池,麓池,山池の4つ分類し、堤体の平均S波速度および卓越周期の特徴を分析した結果、以下の知見を得ることができた。 1.表面波探査によりため池堤体及び基礎地盤のS波速度を簡便に推定することができる。特に今回使用した人工振源を用いた表面波探査は、20m程度までのS波速度を求めることができる。ため池堰堤は10m程度以下の小規模なものが多いことから、最適と考えている。 2.堤体のS波速度は平野部に位置する皿池で遅く、山間部に位置するため池ほど速くなる傾向が見られる。 3.基礎地盤(特に沖積層)のS波速度は、ため池の立地条件や地形条件による違いは特に認められなかった。 4.常時微動によるH/Vスペクトル比から求められる地盤の卓越周期は、ため池の立地条件や地形条件と良い対応を示した。すなわち、皿池地点では卓越周期が0.5秒程度と長く山池では0.2秒前後と短い。 5.堤高と堤体の卓越周期の関係については、堤高が高いほど卓越周期が長くなる傾向が認められた。 平成19年度は、堤体の卓越周期と増幅率の非破壊探査による耐震性評価手法を開発するために、堤体材料を用いた室内土質試験を行い、変形特性などを把握すると共に、動的解析による検討を行っていく予定である。
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