研究概要 |
魚道における魚の挙動の数値モデル開発を目的として,数値モデルの作成と実証のための現地観測の2方面から取り組んだ. 数値モデルの作成に関しては,3次元のVOF法を基本として,まず流れの再現性について検討した.全面越流タイプの階段式魚道とアイスハーバータイプの魚道の2種類の計算を行った.前面越流タイプの魚道については,理論値との比較から,アイスハーバータイプの魚道については現地観測結果との比較から,その再現性について検証した. 現地観測に関しては次のことを行った.(1))現地河川の魚道中に円筒パイプを設置した人工産のヤマメ稚魚(体長:3cm台〜6cm台)の遊泳実験を行い,突進速度について検討した.その結果,突進速度に上限値が見られることや管内流速が190cm・s^<-1>の高流速条件で1秒以上遊泳した個体の平均突進速度と平均遊泳時間はそれぞれ約210cm・s^<-1>と約2.0sであったこと,また,160cm・s^<-1>〜195cm・s^<-1>の条件で遊泳した個体の遊泳距離について30cmまで泳ぐ個体数の割合は約半数で体長4cm〜5cm程度の稚魚が速い流れ場を移動する際の移動距離の目安が示された.(2)岩木川取水堰の幅4.0m・プール長3.0・段差0.2mの全面越流型階段式魚道プール内において水中TVカメラを3台用いて魚類等の遊泳行動を観察し,その行動実態について検討した.その結果,全面越流状態の水理条件で,魚類等は鉛直方向には底から20cmまでの低層部にいることが多く観察され,平面的にはプール中央部の低流速域を主に利用して横断方向や縦断方向へ移動し,上流隔壁直下の空間を利用して横断方向へ移動するのが顕著に見られ,既往の実験室での実験結果とは異なる観察結果となった。また,プール中央部では底部でアユが摂食する様子も見られた。
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