本年度は、前年度に引き続き、q^o<K_s(q^oは土壌表面に与えられた水分フラックス、K_sは対象土壌の飽和透水係数)の条件下において発生する浸潤の不安定化に関して実験を行った。まず、前年度作成した装置を作成し、供試土壌を直径2cm、長さ30cm、厚さ1mmのアクリル製パイプに所定の乾燥密度でできるだけ均一になるように詰め、固定した。マイクロチューブポンプを使用して散水を行い、供試土壌の飽和透水係数を考慮して、q^o=2.06×10^<-2>cm/s〜1.59×10^<-5>cm/sの範囲におけるフラックスを土壌表面に供給した。圧力は、地表から1cm、3cm、5cmの深さに設置した、直径1mm、長さ1cmのマイクロテンシオメータを通して圧力トランスデューサによって正確に測定することができた。本年度は浸潤の不安定化の現象が最も顕著に現れる砂質土(鳥取砂丘砂)を対象に実験を行った。 散水実験は、各土壌についてq^o<K_sの条件を満足する範囲でフラックスの値を変化させ、初期乾燥した条件下における地表からの浸潤過程で生じる圧力の時間的な変化を測定し、勾配を計算するのに十分な精度が得られたので、著者等がもとめた理論式において、実測値における圧力の最大値をh_<we>として計算し、実験で得られた∂h/∂tの値と比較し、θ_<we>-θ_<o>=0.35程度で理論式と適合することを示した。その結果、q^o=0.5K_sで勾配が最大になり、q^oがその値よりも大きくても小さくても、勾配は減少していき、浸潤が安定化することを明らかにした。
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