真空予冷は、副次的に酸素濃度約0.15%の低酸素環境が15分程維持される。そこで、この低酸素環境を利用して一時的な低酸素ストレスによる青果物の鮮度保持効果を呼吸速度の観点から検討した。市販のホウレンソウを用いて、20℃において窒素をチャンバ内へ流入させ酸素濃度が0.15%まで降下した時点でチャンバを密閉し、流入開始から所定の時間経過後に大気を用いて換気して大気条件で48時間貯蔵した低酸素処理区と大気条件のまま48時間貯蔵した対照区の呼吸速度を比較した。その結果、低酸素処理が30、40、50分では、ほぼ同程度の呼吸速度抑制効果があること、20分区では貯蔵初期においてその効果が得られにくいことが分かった。また、実験終了後の外観評価より、50分区には葉面に水浸状の障害がみられ、40分以下の区では障害が観察されず良好であった。別の品種で同様の実験を行ったところ、50分でもあまり効果がみられなかった。4時間大気条件下で貯蔵後に酸素濃度0.15%で5時間貯蔵した結果、酸素濃度0.15%下での酸素吸収速度は、大気条件下に対し1/2程度まで低下した。また、呼吸商は大気条件下では約0.8であり、酸素濃度0.15%下では約1.4まで上昇した。よって、酸素濃度0.15%は限界酸素濃度以下であることが推察され、長時間この環境に曝される場合、嫌気呼吸を招く可能性が高い。また、外観評価でみられた50分区における障害は嫌気呼吸によるものと考えられ、低酸素処理時間が40分と50分の間に、嫌気呼吸による障害が外観に現れるか否かの許容時間が存在していることが示唆された。したがって、真空予冷は低酸素環境による呼吸抑制効果を持つことが分かったが、品種によってはその効果の度合いが異なることが示唆された。今後、品目や温度、圧力条件、処理時間を踏まえて検討していく必要がある。
|