有用原料物質の生産について、昨年度に続き研究し、以下の結果を得た。 HCHL遺伝子導入クローンの中に工業・医療用として有用なp-ヒドロキシ安息香酸(pHBA)のエステル配糖体を乾燥重量で14%程度高生産するエリートクローンを選抜した。pHBA生産に伴って、リグニン含量が減少したかを、細胞壁に結合するフェニールプロパノイドの分析と細胞壁の強度を引っ張り試験を行うことで調べた。その結果、高遺伝子発現クローンでは細胞壁成分として新たにpHBAが多量検出され、僅かのフェルラ酸が検出された。一方、ネガティブクローンではフェルラ酸のみしか検出できなかった。引っ張り試験の結果から、高遺伝子発現クローンはネガティブクローンよりも応力が半分程度に減少し、細胞強度が低下していることが明らかになった。以上の結果から、当初の目的どおり、高生産エリートクローンの作出とその性質を明らかにできたので、現在論文としてまとめているところである。 工業用・医薬品原料となるクマリンの生産について高誘導するハマボウフウのエリートクローンを用いて、更に生産性を高めるための高誘導物質を検索した。その結果、アスコルビン酸が根や葉といった器官に特異的に誘導することを見出したので、論文として投稿中である。 ヒヨスの毛状根のクローンを用いて医薬品のアルカロイドの生産向上について検討している過程で、鉄欠乏時に特異的に有用なリボフラビン(ビタミン B2)が分泌されることを見出した。そこで、この生産を高める要因について検討し、根端の数と太さが重要であること、人工的にpHを低下させると生産が増加することを見出したので、論文発表を行った。
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