研究概要 |
1.色素評価 (1)有色サツマイモのアントシアニン色素評価 ・アントシアニン色素は,抽出液(50%酢酸に24時間浸漬)の吸光度二次微分スペクトルから510±15nmの範囲内で最も吸収の強い波長は,アヤムラサキで525nm,ムラサキマサリで526nmであった. ・アヤムラサキにおいて,525nmを第1波長としてアントシアニン色素の検量線を作成した結果,5波長を用いた場合の予測精度は,重相関係数R=0.861,SEP=0.041であった. ・ムラサキマサリでは,526nmを第1波長としてアントシアニン色素の検量線を作成した結果,5波長を用いた場合の予測精度は,重相関係数R=0.756,SEP=0.019であった. (2)ナスのアントシアニン色素評価 ・各試験片における分光画像(420〜750nm)の吸光度値とアントシアニン含有実測値との単相関係数を求めた結果,最も相関の強い波長は716nmで,相関係数は0.973であった. ・この時の検量線Yは,Y=3.471λ-0.596 (λ=716nmにおける吸光度)で,予測評価精度はRp=0.969,Bias=0,004,SEP=0.054であった. ・アントシアニン色素分布の可視化画像は分光画像の各ピクセルに716nmにおける検量線を適用することで得られた. 2.品質・検査システムの試作 ・試作したシステムは,搬送部と2波長に対応するように2台の画像計測部(フィルター,カメラ,PC)から成る. ・システムの動作は,農産物を画像計測部にベルトコンベアで搬送し,トリガーセンサで検知し,分光画像を取得後,PCで画像処理(背景・ノイズの除去,感度・照明ムラの画像補正,各ピクセルの輝度値を吸光度値へ変換)し,吸光度値を検量線に適用し,アントシアニン含有量を予測し,予測値が目的閾値以上の場合はA品,それ以下はB品に区別してB品をエアー機器で押出すものである.例えば,ナスにおいてはアントシアニン色素含有平均値の閾値は0.76以上をA品,以下をB品として区別するものである. 以上のように,本研究はハイパースペクトルイメージングによって,適正な検出波長の分光画像を用いることで農産物の損傷,糖度(昨年度)ならびに機能性色素(今年度)等の非破壊計測が可能であることを示唆した.
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