【目的】乳腺の発達や分化にはさまざまなホルモンや成長因子などが関与しており、なかでもIGF-Iは乳腺上皮細胞の増殖や生存維持に重要であるといわれている。乳腺上皮細胞においてはIGF結合タンパク質(IGFBP1-6)が発現しており、IGF-Iの作用に影響していることが知られているが、ウシ乳腺上皮細胞のIGFBP発現の調節機構についてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では培養ウシ乳腺上皮細胞のIGFBP発現に及ぼす催乳ホルモンの影響について検討した。【方法】ウシ乳腺上皮細胞は妊娠102日のホルスタイン種乳牛より単離したものを用いた。細胞を催乳ホルモン(デキサメサゾン : D、インスリン : I、プロラクチン : P)で刺激したのちtotal RNAを回収し、逆転写後、定量的PCR法にてIGFBP2-5およびIGF-I-RのmRNA発現量を測定した。【結果】DIP刺激によりIGFBP-3発現は約3.5倍に増加し、IGFBP-5は逆に1/4以下に減少した。IGFBP-2、-4およびIGF-I-Rはほとんど変化しなかった。Dは単独でIGFBP-3発現を増加しIGFBP-5発現を抑制したことから、DIPの作用はおもにDの作用によるものと考えられる。【結論】DIPによりIGFBP-3と-5発現が大幅に変化したことから、乳腺でのIGFBP-3および-5発現が、乳腺上皮細胞の分化過程においてなんらかの役割を果たしているのではないかと考えられる。
|