1.多年生草種は遺伝子組換え体による生態的インパクトが最も懸念されている。そこで、ライグラス類をモデル植物に選び、その雑草性を解析するとともに、遺伝子流出リスクを推定することを目的とした。 2.ライグラス野生化集団の詳細を知るために、河原と農地にそれぞれ調査区を設けて生態調査を行った。河原の野生化集団では堤防側から河道側に向けて個体及び穂の密度が連続的に減少すること、穂密度の低い河道側でもよく結実し、充実した種子をつけ、アリー効果の存外小さいことがわかった。一方、農地の野生化集団では、その侵入によって作物の収量及び品質が低下し、大きな経済的被害をもたらしうること、野生化集団の生活史特性が耕起・収穫作業に適応化していることがわかった。他方、ライグラス類の環境雑草化の現状について国内外の情報を収集した。米国カリフォルニアの海岸草原で問題雑草化しており、一部では駆除等のリスクマネジメントが進行中であった。 3.ライグラス類野生化集団に種問雑種が発生しており、侵入力の強化につながる恐れがあると懸念されている。そこで、雑種識別マーカーの開発を進め、日本各地の発生状況を解析した。 4.ライグラス類では米国を中心に様々な遺伝子組換え体が開発中である。これらの組換え体が商品化され、日本国内で利用される前に、その遺伝子流出リスクを推定しておく必要がある。そこで、遺伝子流出の潜在経路を推定するための基礎研究を行った。国内外の文献調査や野生化集団の生態情報等から、潜在経路推定のフレームワークを考えた。
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