研究概要 |
1.多年生草種は多様な遺伝子組換え体が開発中である。しかし,野生化、雑草化しやすいため,生態的インパクトが懸念されている。そのため予防的管理の基礎となるリスク科学の成熟が必要である。そこでライグラス類をモデル植物に選び,その雑草性を解析するとともに,遺伝子流出リスクを推定することを目的とした。 2.ライグラス野生化集団の実態を詳細に知るために,前年度に引き続き,河原と農地にそれぞれ調査区を設けて生態調査を行った。河原の調査では,特に河原に生息、生育する希少種に着目し,希少種の生息、生育場所への侵入の実態,潜在的侵入経路および衰退させる可能性の有無を調べた。一方,農地の調査では,野生化集団の侵入による作物収量の低下の実態および潜在的侵入経路を調べた。他方,ライグラス類の環境雑草化の現状について国内外の情報を収集した。前年度に把握された米国カリフォルニアの海岸草原だけでなく,ニュージーランドの河原やタンザニアの高地にも侵入していることがわかった。したがって,日本でも海岸,河原,高山への侵入に注意を払うべきである。 3.ライグラス類の雑種識別マーカーを開発した。日本各地の55野生化集団について種間雑種の有無を調べた結果,24集団(43.6%)で雑種個体を含むことが示唆された。 4.遺伝子流出の潜在経路については,特に河原に焦点を当てて推定を試みた。緑化用種子の純度および輸入の不透明性が問題点として指摘された。
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