研究概要 |
1. 牧草・芝草分野では多年生草種の多様な遺伝子組換え体が開発中である。しかし,多年生草種は野生化・雑草化しやすいため,組換え体の環境放出による生態的インパクトが強く懸念されており,予防的管理の基礎となるリスク科学の成熟が求められている。そこでライグラス類をモデル植物として,その雑草性を解析するとともに,遺伝子流出の潜在的経路を特定し,遺伝子流出リスクを推定することを目的とした。 2. 前年度に引き続き,ライグラス類野生化集団の実態を詳細に知るために,河原と農地にそれぞれ調査区を設置して生態調査を行った。さらに野生化集団の発芽特性を解析した。遺伝子流出の基本的枠組みを考案し,特に河原における遺伝子流出の潜在的経路を推定した。他方,ライグラス類の環境雑草化の現状について国内外の情報を引き続き収集した。海外のライグラス類採種地付近の自然草原に,野生化集団が侵入して被害を及ぼしているという報告例を入手した。したがって,採種圃場からの遺伝子流出リスクに注意を払うべきである。 3. ライグラス類野生化集団の雑種個体の分布パターンを,推定される侵入源タイプの面から解析した。緑化用に使われるライグラス種子中の雑種個体の混入の可能性が示唆された。今後,緑化用種子の輸入および流通の諸段階で雑種個混入率の精査が必要である。 4. ライグラス類組換え体の開発状況および環境放出に関する最新情報を収集した。主な組換え体(除草剤耐性,耐乾性,高リグニン,高フラクタン)を選び,河原を例に組換え体の環境放出シナリオを想定し,遺伝子流出リスクの推定を試みた。
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