全国の国立大学附属幼稚園21園に対して記述式アンケート調査表を郵送し回答を得た。アンケートでは「幼稚園における動物介在教育・食育・食農教育の実態」「保護者の食育及び食農に対する意識及び知識」「園児の生活習慣及び動物との関わり」について尋ねるとともに、保護者及び教諭に対する「食農リテラシーテスト」を実施した。保護者及び教諭の「食育」と「食農教育」に対する関心はそれぞれ85.4%と80.3%と高かったが、「食農教育」の意味を知っていた者はわずか27.6%にとどまった。また、「食農リテラシーテスト」の正答率は保護者62.8%、副園長45.6%、教諭50.6%と、特に副園長と教諭の食農リテラシーの水準が低い傾向にあった。保護者は食品を購入する際に鮮度や賞味期限、消費期限、添加物などの食品表示には気を遣っていたが、食品の生産地や無農薬、減農薬など「農」に対する意識は有意に低かった(p<0.01)。園児の生活習慣の調査では、家族全員で夕食を食べている園児は44.7%にとどまり孤食者も存在した。また学年が上がるにつれて園児の就寝時間が有意に遅くなり(p<0.01)、自分で起床出来ない園児が有意に増加した(p<0.05)。また就寝時間の遅い園児ほど朝食を抜く頻度も有意に高くなる傾向にあった(p<0.01)。94.1%の幼稚園が農業体験を、82.4%の幼稚園が園外の動物との触れ合いを教育に取り入れていたが、家畜と触れ合う機会を設けていた幼稚園は17.6%にとどまった。調査の結果、保護者と教諭の食農リテラシーは決して高くなく、また家庭における子供たちの食生活も望ましいものではなかった。今後は幼稚園児及び教諭向けの動物介在型食農教育プログラムを作成し啓蒙することで幼稚園における食農教育の場を整え、子供、保護者、教諭を一体として食農リテラシーを向上させていくことが必要である。
|