タンパク質を構成するアミノ酸のひとつであるアルギニンは、子豚などの幼齢動物では飼料として摂取しなければならない必須アミノ酸とみなされている。また、アルギニンはタンパク質合成の原料としてだけでなく、免疫機能や内分泌機能の調節因子やその基質として作用することが知られている。そのため、幼齢動物の健康な成長のために、アルギニンは重要な役割を果たしていると考えられる。ブタやヒトなどでは、アルギニンの代謝についての研究蓄積があるが、反甥動物におけるアルギニン代謝に関する定量的な検討はほとんどなされていない。 本研究は、タンパク質要求量が高く、免疫機能の維持が重要となる子牛において、アルギニンの体組織での代謝動態について検討することを目的としている。本年度は、そのための基礎的知見を得るために以下の点について検討した。 (1)アルギニン代謝の測定方法の検討 反芻動物において安定同位体標識アルギニンを用いた代謝動態解析の報告がこれまでないため、手法的な検討を行った。具体的には、ヒツジをモデル動物として、頚静脈内へ^<15>N_2アルギニンを定速注入し、経時的に経静脈血および排泄尿を採取し、それらに含まれるアルギニン、尿素、クレアチン、クレアチニン、NO_2などのアルギニン代謝関連物質の濃度と同位体比を測定した。 アルギニン、クレアチン、NO_2の血漿中濃度はガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)による同位体希釈法によって精度よく分析可能であることが明らかとなった。アルギニン、クレアチニ・ン、NO_2、尿素の^<15>N同位体比は、それぞれの物質を誘導体化し、GCMSによって分析可能であった。 (2)消化管および肝臓でのアルギニン代謝 育成牛を用いて、アルギニンの消化管と肝臓での正味代謝量とタンパク質摂取量との関係を検討した。タンパク質摂取量の増加にともない、アルギニンの吸収量は増加したが、肝臓での取り込み量も増加した。これらの結果を、より幼齢な子牛の場合と比較することによって、子牛のアルギニン代謝の特性を知ることができると思われる。
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