農産物の安全性や環境問題についての関心が高まる中、子牛を健康に育成する技術が求められている。体構成アミノ酸のひとつであるアルギニンは、子牛のタンパク質栄養にとって重要であるとともに、一酸化窒素(NO)の産生などを介して免疫機能の促進に関与していることが予想される。したがって、アルギニンとその関連物質の必要量や免疫機能への関与の程度を把握することは、子牛の健康な育成に寄与するものと考えられる。アルギニンは体内で合成される尿素の前駆体でもあり、子牛の成長にともない尿素合成量が増加すると、尿素合成へのアルギニンの需要増加と、タンパク質合成やNO産生へのアルギニン必要量とが競合する可能性がある。そこで、本研究では、離乳に伴う尿素合成量の増加がアルギニンから尿素への変換量に及ぼす影響について検討した。 代謝エネルギーと可消化窒素の摂取量を体重あたりで等しくした哺乳子牛(4週齢)と離乳子牛(14〜15週齢)において、[guanido 15N2]アルギニンと[13C]尿素を静脈内注入し、その時の血漿中15N_2アルギニン、13C尿素、15N_2尿素のエンリッチメントを測定することで、血漿中アルギニンの全身フラックス、尿素合成量、血漿中アルギニンから尿素への変換量を推定した。 その結果、離乳に伴い尿素合成量は増加したが、血漿中アルギニンの全身フラックスは低下した。血漿中アルギニンからの尿素への変換量は変わらなかったが、尿素への変換率は増加し、尿素以外へ利用されるアルギニンのフラックスは離乳に伴い低下した。このことから、離乳に伴う尿素合成量の増加は、アルギニンの利用性を低下させることが示唆された。これらの知見は子牛の健康な成長におけるアルギニン供給の重要性を示している。
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