研究概要 |
南九州における省力的で永続的な粗飼料生産体系を確立する一貫として,過去数年間の試験から,南九州の低標高地では盛夏期間の約4カ月間に,多年的にネピアグラス(Pennisetum Purpureum)の矮性晩生品種(DL)を輪換牧利用できることが確認されている。この家畜飼養体系としては,生体重300kg前後の黒毛和種育成牛(繁殖後継牛)を,10a当り約1頭の放牧強度で,従来補助飼料を給与せずに輪換放牧していたが,育成牛の日増体量(LWG)が0.43,0.42kg/日と低いため,本体系における濃厚飼料補給の影響を2007年では検討した。LWGは2007年の全期間平均では0.57kg/日であり,放牧後速やかにLWGは増加に転じ,放牧後期の速度低下も抑制された。これは第1,3周期の被食量がほぼ同程度であったことから,濃厚飼料補給の効果と考えられた。初回放牧開始時における草量を確保することが,年間を通じた被食量の増加に必須であり,極端な草高の増加は草地の利用率を低下させた。したがって,DL草地の約120日間の輪換放牧において,給与基準の約1/3量の濃厚飼料補給でLWGを約0.6kgに維持できることが明らかとなり,和牛繁殖経営における育成・繁殖後継牛の新たな飼養体系となりうることを提起した。 次いで,南九州の宮崎県(2箇所),熊本県(3箇所),鹿児島県(5箇所)に倭性ネピアグラスを実証展示栽培し,1番草および2番草の生育と消化率,粗タンパク質含量などと土壌の化学性を調査した。その結果,離島を含む実証展示試験地のいずれににおいても,矮性ネピアグラスはよく適応でき,満足しうる粗飼料収量と飼料品質を挙げることが実証された。
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