研究概要 |
【目的】南九州における省力・永続的な粗飼料生産体系の確立を目指し,平成20年度は標準規模繁殖牛農家に合致した黒毛和種繁殖牛群を,ネピアグラス(Pennisetum purpureum Schumach)の矮性晩生品種(以下DL)草地とDLの畦間に追播したイタリアンライグラス(IR)草地に輪換放牧した。【材料と方法】宮崎大学農学部附属住吉フィールド(31.59°N)で,2006年5月25日に栄養繁殖で造成したDL放牧草地0.66haに,2007年12月8日にIR(品種エース)を追播した。黒毛和種成牛10.6頭(放牧開始時平均406kg/頭)と子牛4.1頭(同58kg/頭)を,IRには2008年3月31日から断続的に3周期(計30日間),DLには7月14日〜10月31日に4周期(計71日間)輪換放牧した。DLの休牧期間は4週間で,各牧区退牧後に自給粗飼料を2〜4日間給与(舎飼)し,各牧区の入/退牧時にDLの草高,茎数,草量,部位別乾物重を,各周期の開始/終了時に放牧牛の体重を各々測定した。【結果と考察】13.2aのDL草地計5区 (0.66ha)により,自給粗飼料を舎飼中8.3kgDM/頭/日給与したが,10.6頭の繁殖成牛群を7月中旬〜10月下旬の71日間(舎飼と合わせて110日間)輪換放牧できた。この期間の放牧前草量は389〜703gDM/m^2/年,被食量は214〜484gDM/m^2/年,草地利用率は44〜85%の牧区間変動を示した。成牛の日増体量(DG)はDL草地放牧期間の平均では0.22kg/頭/日で,第3〜4周期目では0.74〜0.77kg/頭/日であり,牧養力は891CD/haと算出された。以上のことか ら,DL草地は盛夏期間の約3カ月半,IRは春期の1カ月輪換放牧でき,繁殖牛群の体重は維持できることから,和牛繁殖経営の新たな飼養体系が提起された。
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