研究概要 |
本研究では、鶏脂肪細胞分化を支配するリガンド依存性転写調節機構を解析することにより、新たな脂質シグナル経路を同定し、その制御機構を明らかにして、細胞の分化を制御することによる低脂肪食肉の生産基盤を確立することを試みた。 (1) 各種転写因子群のアゴニスト・アンタゴニスト添加によるPPARγ mRNA発現亢進作用の解析 鶏前駆脂肪細胞に200〜300μMの脂肪酸を添加した分化培地で培養すると、3時間後にはPPARγ mRNA発現の上昇が認められた。一方、脂肪酸の代わりにPPARγのアゴニストやPPARβ/δのアゴニストを添加しても、PPARγやaP2mRNA発現が短時間で亢進する現象は認められなかった。よって、PPARγ mRNA発現亢進を誘導する脂肪酸依存性転写調節領域が、鶏PPARγ promoterに存在する可能性が示唆された。 (2) PPARγ promoter解析による鶏脂肪細胞のリガンド依存性特異的分化機構の解析 PPARγのプロモーター領域の2000bpをクローニングし、脂肪酸添加・無添加でDual luciferase assayを行ったところ、-700〜900に抑制配列が、-1000〜2000bpに促進配列が見出され、RSRFC4あるいはCREB,HSF-2の推定結合配列が脂肪酸感受性である可能性が示唆された。 (3) 脂肪細胞分化のin vivo調節による脂肪蓄積抑制手法の開発 PPARγのアゴニストであるトログリタゾンを初生ヒナの腹腔内に1回投与することにより、出荷時の脂肪蓄積量が減少し、飼料効率、特に後期の飼料効率が改善した。よって、未成熟な脂肪細胞を多く含む初生ヒナのPPARγを活性化することにより、効率的な、低脂肪鶏が生産できることを明示することができた。
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