研究代表者によりブタ精液中で発見されたリラキシン様蛋白で受精能獲得を誘起したブタ精子におけるタンパクチロシンリン酸化の動態とその標的基質分子のプロテオーム解析に挑戦し、種々の知見を得た。以下にその主要な成果を記す。 1.タンパクチロシンキナーゼ(PTK)の動態とその標的となる基質分子の推移 ブタ精巣より空気圧法で採取した精巣上体尾部精子を実験材料に用い、リラキシン様蛋白を150μg/mlの濃度で精子に4時間暴露処理させた。生存率は平均77%と高い割合を示し、クロロテトラサイクリン(CTC)法による精子の受精能獲得および先体反応の割合は、いずれも平均40%ときわめて高い誘起率を示し、150μg/mlのリラキシン様蛋白を4時間暴露処理したブタ精子では明らかに高効率で受精能獲得が誘起される確証が得られた。そのような暴露処理条件下の精子を用いてPTK活性を調べた結果、PTK活性はインキュベーション時間の経過とともに上昇し、暴露処理4時間では10U/10^8 cllsときわめて高い値を示した。一方、ウェスタンブロット法による解析から、暴露処理精子では約30kDaの位置に特異的なリン酸化タンパク質のバンドを見出すことができた。 2.プロテオーム解析による基質分子の検索 この約30kDaの付近に存在する特異的なリン酸化タンパク質をさらに2次元電気泳動・プロテオーム解析に供した。かなりの苦戦をともなったが、いくつかのスポットを見出すことが出来た。これらのスポットをかきとり、プロテオーム解析を行った結果、興味深いタンパク質である可能性が示唆された。この知見は次年度のPCRによる基質分子の塩基配列決定に資する知見であった。
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