卵用鶏において、産卵数、産卵率等、産卵能力に関する遺伝的改良は、ほぼ生物学的な限界に到達している現在、消費・流通ニーズに対応した卵質の育種改良が重要である。その中で、生産・流通段階での「破卵」問題は、最優先で取り組むべき課題であり、18年3月に農林水産省が改定した「鶏の改良増殖目標」の中の「卵質・肉質等の改良」の第一項目として明記されている。本研究は、DNA解析手法を利用して卵殻強度の改良に資するべく、卵殻強度を支配する遺伝子座位(QTL)を特定し、マーカー選抜に応用できるDNAマーカーの開発を行う。18年度、畜産草地研究所で造成した白色レグホーン種の資源家系(弱卵殻系統×強卵殻系統)における、卵殻強度関連形質(卵殼強度、卵殻厚、卵殻重等)とマイクロサテライトマーカーの遺伝子型の遺伝連鎖関係を解析し、卵殻強度を支配する遺伝子座位(QTL)を第9染色体上に見出した。19年度、さらに詳細に解析を行った結果、卵殻強度関連形質(卵重、卵殻重、卵殻厚等)の候補遺伝子として、オボカリキシン32(Ovocalyxin-32)を見出した。オボカリキシン32遺伝子の第6エキソンに、互いに連鎖した6つの一塩基多型(SNP)の存在を確認した。これによって5つのアミノ酸が連続的に置換した変異型タンパク質が生じることが判った。オボカリキシン32遺伝子の変異型を持つ個体は、卵殻強度関連形質(卵重、卵殻重、卵殻厚等)が優れた卵を産むことが判明し、DNA診断による卵殻強度関連形質の育種・改良が可能になった。本研究成果は、市場への影響が大きいと判断し、特許出願を優先した。
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