研究課題
嗅覚は匂い物質という化学物質を知覚する化学受容感覚であるが、哺乳類には「嗅上皮」、「鋤鼻器」、「マセラ器」の3種類の嗅覚受容器が存在する。そして嗅上皮は食物の匂い、花の匂いなどの一般的匂いを知覚し、鋤鼻器はフェロモン受容、マセラ器は静かに呼吸する時の匂いの受容に関係すると考えられている。しかし哺乳類の嗅覚受容器におけるこれらの役割分担がこのように厳密なものかどうかは甚だ疑問である。一方、視床下部・大脳辺縁系は神経・免疫・内分泌系のクロストークの司令塔であり、そこには嗅覚情報が大きく関与している。そこで本年度は雄のウイスター系ラットを用い、フェロモン受容器である鋤鼻器を外科的に摘出し、鋤鼻器摘出が主嗅球、副嗅球および精巣に及ぼす影響を摘出後1,3、4、8週、6ヶ月、1年に亘り、各4例のラットを用いて免疫組織化学、レクチン組織化学および遺伝子組織化学の技法により検索した。免疫組織化学的検索にはLHRH、PGP9.5、TRHに対する抗血清を用い、レクチン組織化学には21種類のレクチンを用い、遺伝子組織化学的検索は転写因子であるp63に対して行った。その結果、鋤鼻器摘出後に副嗅球は退縮し、免疫組織化学、レクチン組織化学的反応は減弱する傾向を示したが、対照群との差はあまり明瞭ではなかった。また精巣における転写因子p63の発現にも有意な差は認められなかった。今回の結果については今後さらに例数を増やし、詳細な検討をする必要があると思われる。
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J. Vet. Med. Sci. 70
ページ: 1-9
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