本研究課題では、抗がん剤、特に微小管重合阻害作用を持っビンカアルカロイドのp53スーパーファミリーの機能に及ぼす影響についての新知見を得ることを目的とする。研究代表者は、ビンカアルカロイド類に対する耐性獲得過程において、マウス・メラノーマ細胞株B16F10はβ-チューブリンのアイソタイプ変換を示すことを見いだし、さらに、平常ではB16F10株のクラスIIβ-チューブリン遺伝子発現は、第1イントロンに存在する遺伝子制御領域にp53タンパク質が結合することにより抑制されているが、ビンカアルカロイド添加によりこの制御領域からのp53の離脱が確認された。さらに、ビンカアルカロイドをB16F10へ暴露することにより、p53に加えて転写因子Sp1のDNA結合活性の低下が見られ、さらに、マウス・クラスIIチューブリン遺伝子上においてはこの両者の結合領域は極めて近いことが判明した。本年度は、ビンカアルカロイドによるp53スーパーファミリー並びにSp1との相互作用を検討するため、これらのタンパク質のin vitro合成系を確立した。すなわち、マウスp53に加え転写活性型p63およびp73、さらにSp1の全長cDNAをPCRにより増幅した後、ほ乳類発現ベクターであるpcDNA3.1あるいはV5エピトープおよびポリヒスチジンタグをもつpcDNA3.1/V5-Hisへのサブクローニングを行った。これにより、Sp1とp53ファミリーの相互作用並びに抗癌剤暴露下での動態を調べることが可能となった。 さらに、イヌ腫瘍におけるp53ファミリー遺伝子の発現動態を検討する準備として、イヌ乳腺腫瘍由来cDNAを鋳型としてp53および転写活性型p63とp73のcDNA断片を増幅し、pGEM-T easyヘサブクローニングを行い、これらを元にmRNA検出のためのアンチセンスRNAプローブを作製した。
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