研究概要 |
反芻動物では空腸および回腸領域にバイエル板があり、前者が局所免疫を担う二次リンパ器官で、後者はB細胞が分裂増殖し初期レパートリーを形成する一次リンパ器官であると考えられている。ヒトやマウスの骨髄(一般的な有顎脊椎動物におけるB細胞の一次リンパ器官)では、自己反応性B細胞はレセプターエデイテイング機構によって回避されることが知られている。反芻動物でもバイエル板で産生されるB細胞の中には自己反応性B細胞が出現すると考えられているが、回避機構については明らかにされていない。そこで、回腸パイエル板から単離したリンパ濾胞内の免疫グロブリンλ軽鎖の可変領域の解析を進めた。さらに、免疫グロブリン可変領域をコードする遺伝子断片の組み換え、突然変異や塩基対の挿入に関与する遺伝子(RAG1,RAG2,TdTおよびAID)の発現も観察した。その結果、ヒツジ回腸パイエル板においても、レセプターエデイテイング機構が起こっていることを示唆する結果が得られた。これらの研究内容は、第13回国際免疫学会や第8回国際獣医免疫学シンポジウムで口頭発表演題として採択された。次に、ウシの空腸および回腸パイエル板の単離リンパ濾胞を用いて、これらのリンパ濾胞の機能差を解析するために、13種類のサイトカインの発現を調べた。その結果、免疫グロブリンのクラススイッチに関するサイトカインが回腸パイエル板で検出できなかった。つまり、空腸と回腸にあるパイエル板リンパ濾胞内ではB細胞の機能や成熟度に差があると考えられる(投稿中)。さらに、ウシの一次リンパ器官である回腸パイエル板内を肉眼解剖学および組織学的に精査し、一次リンパ組織内に二次リンパ組織と非常に類似した部位があることも発見し、論文として発表した(J Vet Med Sciにin press)。
|