著者らは、一昨年、新規ペプチドのニューロメジンU(NMU)が生体時計部位の視交叉上核(SCN)に局在し、またその受容体もSCNに局在する事を明らかにした。この事実からNMUの時計機構へ関与の可能性が考えられた。そこで、この可能性を確証するため、自由継続リズムを示すラットに、NMUを脳室内投与し、自由継続行動リズムの位相変移への効果を検討した。その結果、NMUの投与時刻に依存して行動リズムの位相変位が認められた。特に、サーカディアン時間(CT)6時投与で位相前進が、また、CTO-3時の投与で位相後退が認められた。N柵の投与後には、SCNにおいてcFosの発現を認めた。次に、NMUのノックアウトマウスにおいて行動リズムを解析した。まず、12時間:12時間の明暗交代条件下では、12例中8例において、顕著なリズムが認められず(暗期に集中する行動リズムが認められなかった)、残り4例は暗期に集中した行動量のリズムが示された。一方、恒常暗下における自由継続リズムを解析したところ、パワースペクトラム解析において6例で約24時間のところにピークの発現が認められず、このことから、リズムの消失が推定された。残り6例中の5例は24時間の周期成分は確認されたが、行動量が減衰していた。また1例はワイルドと差の無いリズムを示した。 以上の結果、ニューロメジンUは視交叉上核内において、光の同調機構および時計のリズム発信機構のいずれの機構にも関与していると推測された。(628字)
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