研究概要 |
平成18年度は(1)胃粘膜上皮,(2)膀胱,(3)腎臓,(4)心筋細胞,(5)移植腫瘍について,対象分子であるEphとephrinの成体における発現・機能解析などを行った。対象臓器・組織・細胞ごとの成果の概要を以下に記す。 (1)胃粘膜上皮:固有胃腺,幽門腺,十二指腸粘膜上皮および胃潰瘍粘膜上皮を対象にEphBとephrin-Bサブクラスについて発現解析を行った結果,(1)管腔側に移動する細胞はephrin-B1を基底側に移動する細胞はEphB2,EphB3,EphB4を発現し幹細胞を境に発現境界が存在すること,(2)胃潰瘍粘膜上皮では境界領域のEphBおよびephrin-B1発現が上昇することを明らかにした。初代培養胃腺細胞を材料にEphB/ephrin-B1シグナル解析を行った結果,EphBシグナルは細胞の膜退縮を誘導することを明らかにした。 (2)膀胱:EphBとephrin-Bサブクラスについて発現解析を行った結果,(1)移行上皮細胞間および(2)平滑筋細胞と神経線維間でEphB/ephrin-Bシグナルが発生する発現様式を明らかにした。 (3)腎臓:(1)皮質と髄質を境界として大まかなephrin-BとEphBの発現境界が存在すること,(2)遠位尿細管細胞にはEphB2とephrin-B1が共発現していることをすでに明らかにしていたため,初代培養髄質尿細管細胞を材料に(2)についてEphB2/ephrin-B1シグナル解析を行った結果,EphB2シグナルはRhoAの活性化とRac1の不活化,および,細胞の膜退縮,ストレスファイバーの形成,焦点接触の拡大を誘導することが判明し,遠位尿細管細胞の細胞構築制御に深く関与することが示唆された。 (4)心筋細胞:機能解析をするために必要な大量な心筋細胞を得るために,ES様株化細胞P19CL6細胞を材料に心筋細胞への分化条件を検討し,最適分化条件を決定した。 (5)移植腫瘍:分泌型EphA2を発現する乳腺腫瘍株を皮下に移植した腫瘍の増殖を調べた結果,空ベクター発現細胞より腫瘍の大きさが有意に減少することを明らかにした。
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