胃粘膜上皮、膀胱、心筋細胞、肝細胞を対象に発現・機能解析などを行った。以下に概要を記す。 (1)胃粘膜上皮:ラット胃腺細胞の初代培養法を確立し、シグナル解析を行った。(1)培養液に可溶性ephrin-B1を添加すると30分後にEphB2は活性化のピークを示し、(2)EphBの活性化は胃腺細胞の膜退縮を有意に誘導するが、ephrin-Bの活性化は誘導しないこと、(3)EphBの活性化は、RhoAの活性化を有意に誘導するが、Rac1の活性化を誘導しないことが判明した(投稿準備中)。(2)膀胱:初代培養移行上皮細胞でシグナル解析を行った結果、(1)EphBの活性化は細胞の膜退縮を誘導すること、(2)ephrin-Bの活性化は細胞の運動性を上昇させることが判明した。また、膀胱癌細胞のBサブクラスの発現パターンは正常膀胱粘膜と異なることも明らかにできた(投稿準備中)。(3)心筋細胞:P19CL6細胞を心筋細胞に分化誘導する既存の方法は、分化率が一定せず再現性に乏しいため、サブクローンを作製し再現性の高い分化誘導法を開発した(投稿準備中)。この分化心筋細胞はシグナル解析には不適であることが判明したため、ラット胎児心臓を材料に初代培養心筋細胞の培養技術を修得した。この心筋細胞を材料に(1)培養液に可溶性ephrin-B1を添加するとEphB4は60分後に活性化のピークを取ることを明らかにした。(4)肝細胞:培養1-3日目初代培養肝細胞におけるEphBとephrin-Bサブクラスの発現パターンと肝細胞の分化マーカーの発現パターンを解析し、(1)培養1日目がin vivoにより近い性状を示すこと、(2)培養時間が進むにつれて脱分化し、これに伴いephrin-B2発現が有意に上昇すること、(3)培養1日目に細胞皮質に出現する帯状の構造体がEphBシグナルにより消失することを明らかにした。
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