研究概要 |
1)バイオインフォマティクスを用いたプライマーの設計プログラムの作成: 我々が開発したコンピュータープログラムを用いて(Endoh et al., 2006)、ゼブラフィッシュのトランスクリプトーム・データベースを対象とし、PCRに適した反応産物が1kbp以下になる繰り返し配列をで探索した。その結果、9merの後に一定のリンカー配列を結合させることにより特異的な増幅産物が得られることを見いだした。わずか20種のプライマーで異なる4,000種の転写産物発現を検出することに成功した(DOP-PCR法)。 2)DOP-PCR法による発現変化配列の探索: 上述の1)で開発した新型DOP-PCR法により発達初期のゼブラフィッシュにおいてTCDD暴露で増加する転写産物を探索した。その結果、17種類の転写産物を候補として得た。シークエンスにより転写産物の特定を行うとともに、プライマーを追加設計し、さらに多くの標的配列について探索中であるが、タンパク質をコードするmRNとして報告されていないノンコーディングRNAと思われる配列がいくつか含まれる。一方、我々はTCDDによる循環障害にシクロオキシゲナーゼ-2(COX2)を介したプロスタグランジン経路が関与することを既に発表しているが(全米毒性学会2005)、経路の下流にあるCYP5A(トロンボキサン合成酵素)とトロンボキサン受容体(TP受容体)が関与することを発見したので(第143回日本獣医学会発表)、これら分子のノックダウンや特異的阻害薬の影響もDOP-PCRで観察している。
|