研究課題
基盤研究(C)
近年、ウエストナイルウイルス(WNV)の日本への侵入が危惧されており、ウイルス検査法と予防・治療法の早期開発が期待されている。しかし、日本ではWNVに近縁の日本脳炎ウイルス(JEV)が存在しており、両者の血清疫学や診断において両ウイルスに対する抗体の交差反応が問題となっている。そこで本課題研究では、ウイルスのゲノムRNAを含まないがウイルスの膜蛋白質であるprMとE蛋白質を含む膜蛋白質で構成される中空粒子(SvPs)を用いた両ウイルス感染の鑑別検査法(抗体検出法)の開発を目的としている。本年度は、(1)WNVとJEVのSvPsの作製と、(2)SvPsを利用したWNVとJEV感染の鑑別法の開発を行った。(1)フラビウイルスのゲノムは一本のプラス鎖RNAであり、5'端より構造蛋白質のC、prM、E蛋白質がコードされている。更に、その下流にウイルスRNAの転写等に必要な非構造蛋白質がコードされている。SvPsは、C蛋白質のカルボキシル(C)-末端を含むprMとE遺伝子を細胞に発現させることにより培養上清中に放出される。WNVのNY株、Eg101株およびJEVのJaGAorO1株、Beijin株の当該遺伝子を哺乳動物細胞に発現させ、それぞれのSvPsを得た。SvPsを疎精製あるいは密度勾配遠心法により精製したものを、WNVとJEV感染の鑑別法の開発に使用した。(2)各SvPsを抗原として、WNVあるいはJEV感染マウス血清に含まれる各ウイルスに対する抗体の鑑別検査を行った。免疫蛍光抗体法では交差反応が認められた。ELISA法では交差反応は認められたが、両者の鑑別は可能であった。また、ウエスタンブロツト法では検討した検査法の中で最も効果的に両者を鑑別することができた。
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北獣会誌 51
ページ: 68-70