研究概要 |
ペスチウイルスのゲノムの5'非翻訳領域の3か所の可変部(V1, V2, V3)における回文様塩基置換(PNS)に基づいて433株のペスチウイルスの分類を行った。二次構造の定量的ならびに定性的特性から、ウイルス属内の種を遺伝学的距離を保ちつつ相互に関連した状態で規定するパラメータを設定した。これにより、本ウイルス属内に、BVDV-1, BVDV-2, BDV, CSFV,プロングホーン、ジラフ、ホビ、ブンゴワナの8クラスターが分類された。回文様部位は、属内で80%以下にみられる低可変部位(LVP)における塩基対の共変異として認識される。したがって、単一ウイルス株もしくはウイルス群の分類学的位置は二次構造の比較によって行うことができる。これにより、種内におけるばらつきを一掃することが可能となり、正確な位置づけが行える。たとえば、BVDV-2の種内に2つの遺伝学的に異なるクラスターが存在することが明らかになった。同様にBDVとCSFVの違いを明瞭に示すことが可能になった。以上のとおり、PNSに基づく分類方法は、ペスチウイルスのゲノムの5'非翻訳領域における変異のうち意味のある置換に限定して分類学的な評価を行っているので、従来の相同性の比較に基づくものよりも明確な結論を得ることができた。
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