研究概要 |
伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)において,病原性との関連が推察されているカプシドタンパク質VP2および非構造タンパク質VP5について,各ウイルスタンパク質を病原性の異なる株から真核細胞発現ベクターにクローン化し,宿主細胞での一過性発現を行った。VP2については,核濃縮を指標にアポトーシスの誘導を検討したが,各VP2由来株の病原性による差は認められなかった。一方VP5では,致死的病原株由来VP5と非致死的病原株由来VP5を宿主細胞でGFPと共発現したところ,非致死的病原株由来VP5発現細胞ではGFPの蛍光がGFP単独発現対照と同様であったのに対し,致死的病原株由来VP5発現細胞ではGFPの蛍光が有意に低かった。VP5発現によるGFP蛍光強度の減少は,ゴルジ装置の機能を可逆的に阻害する薬剤のBFA添加で抑制された。BFAの添加は,VP5の細胞質膜への蓄積阻害効果のあることが報告されている。このことから,致死的病原性株のVP5に認められたGFP蛍光強度に対する影響がVP5の細胞膜への蓄積阻害により抑制される可能性が示された。この現象におけるVP5の機能ドメインを明らかにするためVP5欠損変異体を作成したところ,C末端欠損VP5では蛍光の減少が認められず,VP5C末端に細胞障害に関与する機能ドメインのある可能性が推察された。現在,VP5の中央に存在する疎水性アミノ酸領域の欠損変異体を作出し,細胞膜への局在とGFPの蛍光を指標とした細胞障害性との関連について検討を進めている。
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