1999年にニューヨーク州で発生したウエストナイル熱の流行は、アラスカとハワイ州を除く全州に年毎に拡大していった。ニューヨークで分離されたウエストナイルウイルスの病原性は、アフリカで分離された株と異なり極めて強毒であった。本ウイルスの媒介蚊は、野鳥に吸血嗜好性の高いアカイエカ群の蚊が媒介蚊であったが、ヒトと関わりのある蚊種のほとんどがウイルス感受性を示し、しかも媒介可能であった。しかし、日本の住宅周辺に生息する蚊がこのニューヨーク株ウエストナイルウイルスにどの程度の感受性と媒介能を示すかを調べたデータは極めて少ない。ヒトおよび家畜の生活環境に密接した蚊種の本ウイルス感受性と媒介能を明らかにして、国内への本ウイルス侵入の際のリスク評価を行い、また、蚊のウイルス親和性要因についての解析を試みた。 アカイエカ、ヒトスジシマカ、ヤマトヤブカに対する本ウイルスの感受性と媒介性を既に検討した。これら蚊種の感染率は、アフリカで分離されたウガンダ株ウエストナイルウイルスより高かったことから、ニューヨーク株ウエストナイルウイルスと日本産蚊種との親和性が極めて高いことが推察された。本年度は、この親和性について検討するために、血液のみを吸液した蚊、およびウイルスを含む血液を吸液した蚊を約14日間飼育した後、蚊の中腸のみを取り出し、二次元電気泳動による発現タンパクの解析を行った。その結果、25から100kDA、pH3からpH11の範囲に散在した、複数の比較的強いスポットが感染蚊の中腸に認められた。これらのスポットにはウイルス由来のものも含まれていたが、ウイルス抗体に反応しないスポットがウエスタンブロット解析で明らかとなった。これらタンパクの解析が今後必要である。
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