糖蛋白として可能性の高い25種類の蛋白をコードする遺伝子の破壊株を作製し、それらのINT407細胞への侵入性と1日齢の雛の腸管における定着能を調べた結果、Cj1496を破壊した株はヒト腸管上皮細胞であるINT407細胞への侵入率が野生株と比較して約5%まで低下していることが明らかとなった。そこで遺伝子の破壊が極性変異の結果である可能性を否定するために、当該遺伝子のみを欠損した株(ΔCj1496c)の作製と、その株に当該遺伝子を組み込んだシャトルベクターを導入した株(pEco102::Cj1496c/ΔCj1496c)を作製した。これらの株を用いて細胞侵入性試験を行ったところ、ΔCj1496c株もまた細胞への侵入率が挿入変異株と同等の減少を示し、また、pEco102::Cj1496c/ΔCj1496c株では親株の侵入率とほぼ同等なレベルにまで復活した。このことから、Cj1496cは本菌の細胞への侵入に何らかのかたちで関与することが明らかとなった。 C.jejuniにおいて、糖鎖の付加はD/E-N-X-T/Sというアミノ酸配列で生じることが知られている。Cj1496cのアミノ酸配列の中にはこの糖鎖付加モチーフが2カ所存在する。実際これらの部位で糖鎖修飾が生じているのかを確認する目的で、モチーフ内のアスパラギンをグルタミンに置換した変異蛋白を産生するカンピロバクター変異株を作製した。ウエスタンブロット解析の結果、Cj1496cの2カ所の推定糖鎖付加部位の両方が実際糖鎖修飾を受けていることが示唆された。現在、変異株の細胞侵入性やニワトリ雛腸管での定着性を調べているところである。
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